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経営学って何?―会社の好調・不調の原因を探ってみよう―

高校生のみなさん、こんにちは! Bridge School の福田と申します。

今回は、僕が大学で学んでいる経営学について紹介します! 

 

経営学は社会科学の一つ

経営学は、「社会科学」という学問領域に分類されます。

社会科学…なんだかカタい名前ですね(笑)。でも実は、それほど遠い世界のお話ではないんです!

 

 みなさんは、身の回りの出来事やニュースを見て「〇〇は、なんでこんなことをするのだろう?」「〇〇は、なんでこんなことになったのだろう?」と思ったことはありませんか?

 

〇〇の部分に入るのは、個人であったり、チームであったり、あるいは国であるかもしれません。

 

ざっくりと言えば、人間社会を観察したときに浮かぶ「なぜ~なのだろう?」という疑問を解き明かそうとするのが社会科学です。言い換えると、世の中で起きていること(=結果)について、「原因はこういうことなんじゃないかなー」と考えていくわけですね。

 

人間誰だって、良いことは何度でも起こってほしいし、悪いことは二度と起こってほしくないもの。誰かに命令されなくとも、みなさんも普段から「原因と結果を結び付ける」という行為をしているはずです。社会科学は、その延長線上にあります。

 

そして社会科学の中で、主として会社(企業)に研究対象を絞ったものが経営学です。つまり、「なぜこの会社は優れているのだろう?」とか、逆に「なぜダメなのだろう?」とか考えていくわけです。会社の経営が上手く行っているなら、やはりその秘訣を知りたいですよね。あるいは、上手く行っていない原因を明らかにして教訓とすることもできるでしょう。

 

 

原因は「中」か「外」か?

先ほども言ったように、「原因と結果を結び付ける」という行為は私たちが日常的にやっていることです。学問だからと言って、さほど特別なことをしているわけではありません。

しかし、それは簡単だという意味ではありません。研究していく中で気をつけなければならない点、言い換えれば、私たちがつい陥りがちな罠のようなものがあります。

その一つを、経営学を例に見て行きましょう。

 

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上の図を見てください。実在するある会社の業績の移り変わりを示したものです。どの会社とは言いませんが、「この木何の木」のCMゲフンゲフン

ここでは仮にA社としておきましょう。

 

横軸に年度(1970~1990)を、縦軸にこの会社の利益率(りえきりつ)*1を取っています。利益率というのは、「会社の調子の良し悪し」くらいに思っておいてください。 

 

A社の利益率を見てみると、ガクッと落ち込んでいるところが2ヵ所ほどありますね。

一つは1974年度、もう一つは1985~1986年度です。

 

これを見たある経営学部生。早速、仲間を集めて議論を始めました。

「よーし、この時期どうしてA社の調子が悪いのか、原因を探ってみよう! そこから教訓を引き出そう!」

「新製品の出来が良くなかったのかな?」

「社員がチャレンジ精神を無くしちゃったんじゃない?」

 

・・・とまあ、大体こんなふうに話が進みます。でもこれ、非常にマズい方向に議論が行ってしまっているんです。どこがおかしいか分かりますか?

 

上の会話では、「A社の調子が悪い=A社自身に問題点があった」という前提で話されています。しかし、実際はそうとは限りません。A社の不調は、ひょっとしたらA社の外(環境)で起きたことが原因かもしれないですよね。

 

会社を取り巻く環境は、刻一刻と変わって行きます。そんな中で、自分の会社にとって不都合な環境変化が起きれば、別に会社自身が何かを間違えなくても、調子は悪くなるでしょう。

 

そういう場合に、「A社のこんな点が問題だった。だから、調子が悪くなってしまったんだ!」というふうに考えるとどうなるでしょうか? 教訓となる有益な知識を得たつもりが、無駄な、いやむしろ害を及ぼしかねない知識をつけてしまうことになります。

 

もう一度、急落している時期を確認してみましょう。まずは1974年。公民科目が得意な人であれば、この時期にピンと来るものがありませんか?

 

 

 

そう、(第一次)オイルショックの影響で、日本が戦後初めて実質マイナス成長となった年ですね。つまり、景気がどん底まで落ちている時期なんです。この年に利益率が下がっているのは、A社自身の問題というよりも「日本経済」という環境が変化したことが原因である、と考えるのが適切でしょう。

 

次に1985年頃。この時期の不調もやはりA社自身ではなく、公民科目の教科書に載っているような、日本経済のとある変化によるものです。

 

何だか分かりますか?

 

気になる人は現代社会とか政治経済の教科書・参考書をのぞいてみてください。

  

「よく似たヤツ」と比較しよう

上で述べたように、良い結果であれ悪い結果であれ、その原因がA社の中(=A社自身)にあるのか、A社の外(=環境)にあるのかということをまず考える必要があります。

 

それにしても、これ、簡単に見分ける方法が無いものでしょうか。

 

完璧ではありませんが、実は一つ便利な方法があります。A社のライバル(たち)と比べることです。

 

ライバル会社は、A社と同じような環境に置かれています。ゆえに、もしA社の利益率が環境変化のせいで下がったのであれば、そのライバル会社の利益率も下がっていなければおかしいですよね。

 

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実際に、ライバルのB社と比べてみたのが上の図です。

見てみると、1974年度、1985年度にはB社も似たような利益率の落ち方をしているのが分かります。やはりA社の外に原因があると考えて間違いないでしょう。

 

ちなみに、その後も驚くほど両社の好調・不調の波が重なるわけですが、2004~2007年度を見てみましょう。B社の利益率が上昇している一方で、A社はほとんど横ばいですね。この場合は、B社の中に好調の原因を求めることができそうです。

 

・・・とまあこんなふうに、比較するといろいろ見えてくるわけですね。これは経営学に限らずあらゆる社会科学の研究に言えることですが、比較はとても重要なのです。

 

 

 

いかがでしたか?

経営学がどんなものなのか、少しでもイメージがついたでしょうか?

この記事を見て、経営学に興味を持ってくれた高校生の方がいらっしゃればすごく嬉しいです!

ではでは!

 

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*1:より正確には、「売上高営業利益率」というもの